こんにちは。
埼玉県所沢市の有限会社石州石工興業です。
最近の暑さはちょっと異常ですよね。
連日猛暑日が続き、危険な暑さです。
現場で働く皆さんはもちろん、屋内でも無理せずにエアコンや扇風機等を使って、水分もしっかり取って、睡眠もたっぷりとって、お酒は控えめに・・・して体調管理に尽くしましょう。
さて今回はあまり聞き慣れないかもしれませんが、『間知(けんち)ブロック積み』についてお話したいと思います。
基本的な間知ブロックとは(滑面)、埼玉の方では一般的に横450mm×縦300mm×厚さ350mmのコンクリート二次製品の事を指します。
上記の大きさで1㎡当り7.4個使う事になります。
A種とB種の2種類があって違いは重さ(質量)になります。
B種が1個約40~42kg(メーカーによって違いがある)質量が1㎡当り350kg以下(300kg)となってます。
A種が1個約47~49kg(メーカーによって違いがある)質量が1㎡当り350kg以上
最近では質量の重いA種を使用する現場が増えています。
※共栄建材工業株式会社様カタログより引用
さらに少し小さい横400mm×縦250mm×厚さ350mmの1㎡当り10個使う、重量が約35kg、質量が1㎡当り350kg(A種)があります。
※タカコン株式会社様カタログより引用
これらのブロックを垂直に真っすぐ積むのでは無く、斜めに角度を付けて、土圧、耐圧、現場周辺の環境に合わせて設計段階でどの種類のブロックを使用してどの角度で施工するか決定されます。
JIS A 5371 6A-350(1㎡当り7.4個A種)
JIS A 5371 6B-350(1㎡当り7.4個B種)
JIS A 5371 2A-350(1㎡当り10個A種)
間知ブロックの形
上記の大きさは基本の型(S型・A型・基本・並み・等と呼ばれる)で一番多く使われる表面が長方形のブロックになります。
他に谷積みの場合、一番下(基礎の上)や、一番上(天端)に使われる型(N型・B型・根石・等と呼ばれる)端末や目地の場所の上下に使われるD形、E型、そのD型とE型の中に使われるC形、基本のA型の横が半分の大きさ(1/2型・H型・等)があり、メーカーによってはB型が3種類、D型・E型の左右の違いなど、A型・B型・C型・D右型・D左型・E右型・E左型の最低7種類は通常1現場で使います。
他にも基本の型(S型・A型・基本・並み・等)の一部に穴が開いていたり、現場で加工したりして水抜きパイプを設置します。
水抜きパイプにも種類があり、VP(厚さが厚い)とVU(厚さが薄い)があります。
大きさは通常50mmか75mmを使用して、50mmの場合は2㎡当り1か所、75mmの場合は3㎡当り1か所で配置する事が多いです。
パイプの種類、大きさ、配置する数等も設計の段階で計算されてどこに配置するか等も図面上で指示されます。
赤い丸が水抜きパイプの位置です。
D型とE型は左右の向きがメーカーによって呼び方が色々あるので、間違えないように各社のカタログ等を参考にしましょう。
上の図のように天端が平らでB型が入らない斜めの所もあります。
その場合はブロックを切断して高さを調整します。
上が天端が斜めの時のブロックの割付図です。
少し判りにくいですが、下がこの位置の完成後の写真です。
天端のブロックが斜めにカットされているのがわかるでしょうか
このように天端が平らでも、斜めでも臨機応変に対応出来るのも間知ブロックの魅力の一つかもしれません。
※使用ブロックは共栄建材工業株式会社の6A-Fです。
間知ブロックの種類(模様)
間知ブロックの表面の種類もたくさんあります。
・「滑面」一番よく見かけるのが上の写真の表面が真っ平な滑面です。
・「凸面」表面が出っ張っている形をしてるのが凸面です。
・「凹面」表面が引っ込んでいるのが凹面です。
・「粗面」ザラザラした模様や飾りがあるのが粗面です。
・「ポーラス」コンクリートに特殊な骨材を混ぜてわざとブロックの表面や内部に空隙(すきま)を作って植物や苔など自然な景観になるように作られているポーラス
・「スプリットン・割肌」2個のブロックを硬化後に2つに割って表面を自然石風に見せるスプリットン、または割肌と言われる模様。
・「ナチュロック」表面に自然石を埋め込んだ物
等々、同じ形でも表面の種類が違うだけで間知ブロックの表情、雰囲気、景観が全く変わります。
見た目の他にもブロックの明度(明るさ、光の反射率)が違うのでその当りもブロック選定基準になっていたりします。
たいがー1号
※タカコン株式会社様カタログより引用
「粗面」
アニーヴンポーラススプリットン
※山富産業株式会社様カタログより引用
「ポーラス」
スプリットン間知ブロック
※株式会社赤城商会様カタログより引用
「スプリットン」
ナチュロック間知ブロック
※日本ナチュロック株式会社
ナチュロックプロモーション株式会社様カタログより引用
「ナチュロック」
間知って何?
そもそも、間知(けんち)ブロックの名の由来はどこから来ているのでしょう。
ブロックの部分は何となくわかります。
昔は石で積んでいた物をコンクリートに変えて作ったのが間知(けんち)ブロックです。
では【間知】とはどういう意味なのでしょう。
私の師匠に昔聞いた話だと間知石(けんちいし)の数で1間(いっけん、六尺・約1.8m)が判ると、「あいだ(間)をしる(知る)」事が出来るからそう呼ばれていたと聞きました。
間(けん)は昔の長さの単位ですね。
毛(もう)・厘(りん)・分(ぶ)・寸(すん)・尺(しゃく)・間(けん)・丈(じょう)・町(ちょう)・里(り) と大きくなっていきます。
因みに今の間知ブロック積でも斜めの勾配の角度に「分(ぶ)」や「割(わり)」等昔の単位が使われていたりします。
3分(さんぶ)・4分(よんぶ)・5分(ごぶ)・1割(いちわり)・2割(にわり)等
※正確に言うと分勾配は積みで割勾配は張りに区分けされる。
もちろん角度もあります。
75°・70°・65°・45°等(45°から張りの区分けになります)
3分の表記の仕方は 1:03 です。
縦に垂直に1進んで、横に水平に0.3進んだ所を最初の縦の始まりと結ぶ斜めの線です。
4分、5分も同じように1:04・1:05と表記され、3分との違いは横に水平に進む距離がそれぞれ0.4と0.5になります。
解かりやすいのが縦に1000mm行って、横に300mm行った線を結んだ斜めの線、1m高さが上がると、30センチ後ろ(地山側)に傾く角度です。
上の図の斜めの線がそうですね。
斜めの所の長さと、地面との角度は・・・
3分が斜めの所の長さが1044mmで角度が73度18分3秒・・・と角度は秒まで行ってしまいます。
斜めの長さは計算でも出せます。
一つはピタゴラスの定理と呼ばれる、直角三角形の2辺の長さが分っているときに、もう1つの辺の長さを求める方法です。
もう一つは三角関数の計算式で、こちらも直角三角形の2辺の長さが分っていると、もう1つの辺の長さと、角度も出せます。
主に現場では斜めの数字は暗記しているので計算はしませんが、現場で電卓で出すときはピタゴラスの定理の「a×a+b×b=c×c」つまり「√(ルート)aの2乗+ bの2乗」で計算します。
もう一つの勾配が「度」の時は
このようになります。
※どちらもmm以下の単位は四捨五入してあります。
間知ブロック積は垂直に積まないので、どうしても高さがあがると間知ブロック上端部の土地が狭くなってしまうと言う欠点があります。
しかし最大でGLから上の垂直高さはなんと5mまで高く出来ます。
しかも「もたれ式擁壁」なので、後ろの地山の掘削土量が少なく済むと言うメリットもあります。
出来るだけ間知ブロック上端部の土地の面積を広く取るために勾配を起こしたい所ですが、3分(75°)はGLから上の直高が3mまで。
4分(70°)はGLから上の直高が4mまで。
5分(65°)はGLから上の直高が5mまで。
と決まりがあり、高さが高くなればなるほど勾配が緩くなります。
※例外もあり。
「積み」ではありませんが、1割勾配(10分)の場合は、1m垂直に上がって横に水平に1m行った所を結んだ斜めの線の角度になります。
つまり45°ですね。
ピタゴラスの定理で、「√(ルート)2」、昔習った「ひとよひとよにひとみごろ」ってやつです。
間知石も場所場所によって形が様々で、正方形だったり長方形だったり6角形(亀甲石積み)だったり大小様々な石を組合わせたり等、色々あります。
ぱっと直ぐに想像出来るのはお城の石垣ですね。
普段通っている道を少しゆっくり周りの景色を見ながら歩いて見てください。
必ず身近に間知石積みや間知ブロック積みがあるはずです。
何の為にその場所に、その種類の石積やブロック積みがあるのか、ただの土留めだけに収まらない多種多様な種類の石やブロックに気が付けると思います。
有限会社石州石工興業は埼玉県所沢市に創業して50年弱、様々な間知ブロック積やコンクリート二次製品の敷設等、なんでもご相談下さい。
通勤可能範囲なら都内、県外でも施工します。